初すべりの思い出

初すべりの苦い思い出

あれは僕が20代の後半だったから、今から30年くらい前の話になるのだが…。札幌では10月の末にけっこうな雪が降った。その朝、僕と現在のドルフィンズスキー学校の校長は二人でテイネ山に初すべりに出かけた。もちろんスキー場はオープン前でリフトはまだ動いてはいなかったのだが、なんと山道をパジェロで頂上まで上げる事に成功。女子大回転コースにはなんと50㎝の新雪が積もっていた。                    11月から約1か月間、ネパールにトレッキングの仕事で札幌を留守にすることが決まっていた僕はよせばいいのに新車の「クナイスル・ホワイトスター」で勇んで滑り出す。なんとパウダーの快適なことか!ごきげんで2本目を登り返すころには、他のスキーや-たちも現れ、女子大スタートハウス付近はギタギタの様相に変わってきた。

お構いなしに2本目を滑り出して、2ターンめに入ったところでガリっと石を踏んだ。慌てて飛びのいてエアターンで着地した所にも石がありガリガリガリと確かな足ごたえ…。スキーを脱いで滑走面を確かめると、まるで彫刻刀で掘ったような傷跡が!

 

なんかの間違いだ、さらに3本目。コースはますます荒れてもはや石を踏まずに滑るのは絶対不可能。

哀れ新車のホワイトスターは彫り物だらけに。

 

その日は意気消沈して、もはや滑る気になれず退散。

 

この事件は僕の心にも深い傷を残した。

なので、初雪が降っても腰が重くなり、そうやすやすとは山へは出かけて行かないようになってしまった。

もちろん、いいスキーは斜面が安定する12月の中旬までは大事にしまっておく。

 

シーズン初めと春のスキーはぼろ板で、そんな事は今では当たり前の話だが、若かったあの頃の苦い思い出だ。

 

温暖化で雪不足に苦悩する現在のスキー場の多くは30㎝も雪が降れば、問題なく滑れるようにゲレンデに芝生を張り付けているところが多い。さあ、今シーズンの初すべりはどうしてやろうか?